KINZAI FINANCIAL PLAN
2005年2月号
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公的年金の繰上げ受給の損得 |
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Q 4月20日で60歳となり、定年退職を迎えますが、老齢基礎年金は63歳にならないと満額もらえないと聞きました。また、老齢基礎年金を繰り上げてもらうこともできると聞きましたが、損はしないのでしょうか。 A 老齢基礎年金の繰上げについては、そのデメリットを十分考慮し、原則受給との累計受給額の推移や逆転の時期等をよく確認してから選択するようにしましょう。 ◆ 老齢基礎年金は76歳が分岐点 60歳代前半の老齢厚生年金は生年月日によって、支給開始年齢が段階的に引き上げられています。そこで、60歳からの年金額の減少に対応するために、65歳からの老齢基礎年金を繰り上げて受給することができます。ただし、老齢基礎年金の繰上げ請求は、金額が減額(O.5%×繰上げ月数)されたり、退職後の60歳から65歳までのあいだで障害年金を請求できなくなったり、寡婦年金の受給権が消減したりといったデメリットがあります。 なお、60歳代前半の考齢厚生年金については、繰上げ、繰下げはできません。この点を誤解なきよう顧客に説明する必要があります。 60歳到達月から繰り上げて30%(5%×60月)減額された老齢基礎年金を受給すると、65歳から、老齢基礎年金を受給している場合と比べて、いつかは累計受給額で追い抜かれます。この分岐点までは繰上げ受給が有利ですが、以後は原則どおりの受給が有利になります。これは、余命やライフプランに左右されるので、あくまで顧客の判断で行う必要があります。 では、繰上げ受給の分岐点について検証してみましょう。国民年金のみに40年間加入した場合、65歳から満額の老齢基礎年金(約80万円)を受給できます。60歳到達月から繰上げ受給した場合は、約56万円の年金額となりますので、65歳までは、原則受給する人より累計額で約280万円多く受給することができます。 ただし、65歳になると原則受給の場合と比べて、毎年約24万円年金額が減額されますので、65歳から約11年後(280万円÷24万円)の76歳ころには追い抜かれてしまいます。 なお、繰上げ請求をする時期によってもこの分岐点は異なりますので、ケースごとに試算することが必要です。 以上は、老齢基礎年金のみの場合ですが、厚生年金保険の加入期間がある人が全部繰上げや一部繰上げをした場合はより複雑です。 ◆ 顧客ごとに異なる損得 今年60歳になる1945(昭和20)年4月20日生まれで、20歳から60歳まで40年間、厚生年金保険に加入していた例で説明します(経過的加算と加給年金は考慮しないものとします)。この場合、63歳から定額部分を受給でき、その額は65歳からの老齢基礎年金の額とほぼ一致(約80万円)します。 この事例では全部繰上げと一部繰上げを選択できますが、一般的に厚生年金保険の期間が長い場合は全部繰り上げが不利といわれます。1941(昭和16)年4月2日以後生まれの人が60歳到達月から老齢基礎年金の全部繰上げをした場合、老齢厚生年金の報酬比例部分と併給されます。したがって、63歳までは、繰り上げた老齢基礎年金の額(約56万円)を受給できます。 また、63歳からは、老齢基礎年金をすでに繰り上げて受給しているため、定額部分のうちの基礎年金相当額部分が支給停止となります。したがって、毎年、約24万円の減額となり、70歳のときには原則受給の人に追い抜かれてしまうことになります。 一方、一部繰上げは定額部分が段階的に引き上がっていく1941(昭和16)年4月2日以後1949(昭和24)年4月1日以前生まれ(女性は5年遅れ)の人のみが活用できる制度で、63歳から65歳までの定額部分の総受給額はそのままで、65歳からの老齢基礎年金を一部だけ繰り上げる仕組みです。 事例の場合、63歳から65歳までの定額部分の総受給額を変えずに60歳から65歳までの5年間で受給(約80万円×2/5=約32万円/年)することになります(繰上げ調整額)。この繰上げ調整額が65歳からは老齢基礎年金加算額に置き換わります。老齢基礎年金の残りの部分が60歳から一部繰上げされることになり、この額に対して減額率がかかります(約80万円×3/5×70%=約33万6000円)。 つまり、60歳から受給できる額は約65万6000円となり、結果として5年間分(60月)繰り上げたにもかかわらず、3年間分(36月)のみの減額率になります。また、分岐点についても、76歳のときとなりますので、全部繰上げと比較すると有利です〔図表1〕。 一方、同じ生年月日で厚生年金保険の期間が10年、残りの30年が国民年金の期間である人の場合、63歳から65歳までの定額部分の年金額は約20万円しかありません。この場合、65歳からの満額の老齢基礎年金を全部繰り上げると60歳代前半の年金受取額は増加します。しかし、75歳ころになると原則受給の人に累計受給額で追い抜かれます。また、一部繰上げを選択した場合は76歳で追い抜かれます〔図表2〕。 年金の繰上げ請求については、まず、デメリットに留意する必要があります。損得は一概に決められるものではありませんが、何歳で原則どおりの受給の人に累計受給額で追い抜かれるかは、その人の生年月日や厚生年金保険・国民年金の加入期間によって異なるため注意が必要です。社会保険事務所では、65歳、70歳、75歳までの年金累計額や総受給額逆転年月について個人ごとに試算してくれますので、活用することをお勧めします。
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