ここでは、中小企業で実施が想定される退職給付制度についてお話しします。
1.中小企業退職金共済制度(中退共)
制度の概要
企業の相互扶助と国のサポートによって、単独で退職金制度をもつことが難しい中小企業での制度の導入を可能とする制度です。
◇実施事業主の要件
加入できる企業は、業種によって従業員数または資本金の要件あります。
加入対象者
〇従業員は、原則として全員加入
(契約社員や短時間労働者など一部は加入させないことも可能)
〇役員は加入対象外
掛金の設定
〇賃金や勤続年数に応じて、5,000円~30,000円で従業員ごとに掛金月額を設定
〇短時間労働者は2,000円~4,000円の選択も可能
制度の特徴
2.確定給付企業年金制度(DB)
制度の概要
〇従業員への将来の給付額を設定し、その給付に必要な掛金を企業が拠出、運用する制度。
母体企業とは別の法人格をもった基金を設立し、基金で年金資金を管理する「基金型DB」と、
企業が信託会社や生命保険会社等と契約を結び、外部で年金資金を管理する「規約型DB」がある。
〇「基金型DB」には、「単独型」と「複数事業主型」がある。
◇実施事業主の要件
〇「規約型DB」は設立要件は特になく、「基金型DB」は加入者数が原則300人以上
〇制度導入についての労使合意のもと、「規約」を作成する
◇加入対象者
〇厚生年金保険加入者
〇加入対象者に「一定の資格」を定めることも可能
(一定の資格=一定の職種、一定の勤続年数、一定の年齢、希望者等)
◇掛金の設定
〇定額、給与に一定割合を乗ずる方法、加入者の年齢等に応じて額を定める方法、またこれらを合わせて定める方法により、規約で定める
〇掛金は原則全額事業主負担
(同意を得た場合に限り、掛金総額の1/2を上限に加入者負担が可能)
◇制度の特徴
3.企業型確定拠出年金制度(企業型DC)
制度の概要
〇企業が拠出した掛金を加入者である従業員が自ら運用し、
その運用結果によって将来の給付額が決定する制度。
〇中小企業向けに、導入や制度運用時の事務負担を軽減した簡易型DC制度もあり。
◇実施事業主の要件
〇従業員規模等の事業主要件はない(簡易型DCは従業員300人以下)
〇制度導入についての労使合意のもと、「規約」を作成する
◇加入対象者
〇厚生年金保険加入者
〇加入対象者に「一定の資格」を定めることも可能
(一定の資格=一定の職種、一定の勤続年数、一定の年齢、希望者等)
◇掛金の設定
〇定額、給与に一定割合を乗ずる方法と、これらを合わせて定める方法により、
規約で定める。(掛金上限は55,000円/月)
〇掛金は原則事業主負担で、規約に定めた場合は加入者も掛金拠出可能
(マッチング拠出)
◇制度の特徴
4.中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)
制度の概要
〇企業年金制度を実施していない中小企業の事業主が、個人型確定拠出年金(iDeCo)に
加入している従業員の掛金に上乗せして、掛金を拠出できる制度。
〇iDeCoの加入者掛金と事業主掛金を、企業が取りまとめて納付する。
◇実施事業主の要件
〇厚生年金被保険者数が300人以下で、DB、企業型DCなどを実施していない
〇労使合意が必要
◇加入対象者
〇厚生年金保険加入者
〇加入対象者に「一定の資格」を定めることも可能。
(一定の資格=一定の職種、一定の勤続年数)
◇掛金の設定
〇事業主掛金+従業員掛金の合計額が5,000円~23,000円/月となるよう設定
〇一定の資格ごとに掛金額を設定することが可能
◇制度の特徴